開発事例 生産効率を視野に入れた新商品開発。『つゆのだし抽出用削り節』
イントロダクション
※この事例は顧客情報への配慮から、一部のディテイルを変更して紹介しています。
飽和状態にあると言われている食品市場でも、めんつゆを始めとする液体調味料のカテゴリは堅調な成長を続けています。同時に醤油メーカー、食酢メーカー等の様々な参入者がいるため、競争の激しい市場でもあります。この事例は生産効率を意識した素材を選ぶことにより、味と業務プロセスの両面で品質向上を果たした事例です。
悩み事 ー社長が「コストダウン」とだけ言った
その開発担当者はある朝社長から呼ばれ一言「コストダウン」と告げられました。つゆの業界は成長期から成熟期に向かっています。しかし、参入者は多く(例えば、今はつゆを看板商品の一つとする節辰商店だって削り節メーカーからの新規参入組です)競争は激化しています。品質とコストのバランス、それはメーカーにとっての永遠の課題でもあります。
きっかけ ―抽出効率に関する仮説が欲しい
これまでそのメーカーは食品卸業者から汎用的な厚削りを購入していました。そこで開発担当者は卸に相談しましたが、科学的な回答はなかなか得られません。開発担当者が欲しかったのは、原材料の価格の情報ではなく、抽出効率(つまり、歩留)に関する仮説に繋がる情報でした。そこで彼はだしの専門業者に話を聞くことにします。節辰商店に声をかけたのは、削り節だけでなく、だしパックや液体だしを作っていること、自社と同じISO9001システムを運用していることから、なんとなく頼りになりそうな気がしたのです。
解決策 ―愚直にやりきる
やったことは簡単です。愚直と言ってもいいくらいです。様々な原料、様々な厚さの削り節を節辰商店に運ばせ、実際に生産ラインでテストしました。しかし、すべての原料と厚さでテストしようと思ったら膨大な数の順列組み合わせになります。そこは節辰商店が課題に沿った商品を絞り込んで持ってきたため、いくぶんかはラクになりました。
その後 ―ふたたび社長に呼ばれる
最終的には鰹やむろあじの中厚削りをネットに入れてだしを抽出することがこのメーカーにとっては最適だということが分かりました。正直に言うと、原材料自体のキロ当たりの値段は上がりましたが、だしが伸びるため、目標としていた以上のコストダウンが達成されました。また、このプロジェクトの副産物として、品質面での向上がはかられました。これまでよりも味が安定するようになったのです(これは業務の標準化にも繋がり、製品に直課される直接人件費の面でもメリットがありました)。開発者はある朝またもや社長に呼ばれましたが、それは労をねぎらうお言葉でした。